カテゴリー: 小説

  • ユダの福音 – 05話

     それから一週間は飛ぶように過ぎた。 年に一回の民衆のガス抜きと見ているのか、過越祭の期間に入るとローマ帝国の…

  • ユダの福音 – 04話

    「すまなかったな」 安息日が終わった夜の酒場は良く賑わう。店内は程よいざわめきに包まれていて、忙しなくぶどう酒…

  • ユダの福音 – 03話

     過越祭が近づくにつれて、町中はにわかに活気づく。商売をしているものはここぞとばかりに特別メニューや出店の準備…

  • ユダの福音 – 02話

     ラビたちの話はつまらない。 口を開けば罪だ罪だと繰り返すばかりでちっとも役に立ちやしない。そうやって罪に定め…

  • ユダの福音 – 01話

     ──こんなはずじゃなかった。 手に握りしめた麻の袋の中で銀貨が嫌な音を立てながら跳ねる。息が詰まる。一刻も早…

  • 雨と珈琲:4話 あなたの言葉は誰の為に

    あなたは語ることを職業としてるんでしょう、と彼女は言った。その通りだった。私はただ語ることによって生計を立てて…

  • 雨と珈琲:3話 June Minority Graduation

    現実は結局多数が決めた常識に則って動いているし、それから弾かれてしまったら何も出来なくなってしまうの。だからわ…

  • ThreeAngles:3話 In amore quoque, falsus in uno, falsus in omnibus.

    私は何でも知っている。だから彼の様子がおかしいことはずっと前からわかっていた。けれどそれはどう考えたって信じた…

  • ThreeAngles:2話 inopia amicos probat.

    その日はとても寒い雪の日だったのを、私は覚えている。音もなく降り積もる真っ白な夜に、私は彼に抱かれたのだ。それ…

  • ThreeAngles:1話 ne vivam si abis.

    チン、と小気味良い金属音を響かせて熱されたそれは、甘い白濁をしていた。 私は温まったミルクを手に取って口をつけ…